2024年1月17日水曜日

大衆酒場 甲州屋|老舗酒場には年数に応じた古客がいる

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 町屋の個人酒場はいい。何がいいかって、いい具合に小ぢんまりしていて、せかせかしていない。ゆったりとした時間が流れているのだ。
 この甲州屋も、いつも満席になるほど混んでいるのだが、落ち着いてゆったり飲める。静かなのかといえば、そんなことはない。カウンターは、一人客が多いが、小上がりには数人連れのお客さんがいてワイワイやっている。背中でその賑わいを感じながらも、カウンターに向かっていると一人の世界に浸れるのだ。


 でも、この日は違った。お店に入るなりカウンターは開けた世界の様相を呈していた。カウンターにいた地元の大先輩が、今日は寒いねーとニコニコ声をかけてきた。寒いですねと返したが、ニコニコしてるだけだった。
 お通しは、きぬかつぎか、いいねぇなんて一人の世界に浸った。


 以前来た時に、他のお客さんが食べていたぶり大根が美味そうだったので、頼んでみた。いやぁ、寒い夜はぶり大根だなぁ。熱燗にしようか迷ったが、最近飲み過ぎで胃腸疲れ気味なので、軽くレモンサワーにした。
 昭和23年(1948)創業という甲州屋は、戦後の貧しい時代の酒場らしく、創業当初は、もつメニュー中心のお店だったらしい。それが、年を経るにつれて美味しい魚介が食べられる居酒屋に変わっていったのだ。


 あともう一品食べて帰ろうと思い、しめ鯖。これが、絶品だ。絶妙に鮮度を保ち、噛むと酢の中に脂の旨みがじゅわ〜っととろけ出す。
 しめ鯖好きにはたまらない。写真でお伝えできるだろうか、この色艶がとても美しいし、見ただけでうまそうなのだ。
 一人の世界に浸り、しめ鯖に感動していると、くだんのカウンターの大先輩が、ついに、唐突に話しかけてきた。今日はいいことあったんだよ。
 そうなんですか。どうやら、株で一儲けしたらしい。こんなこと言うと大変失礼だが、最初見た感じ、この辺の町工場で働いてた人なのかなと思っていたのだが、そうではなく、家業を継いだ会社を経営してたらしい。
 大変だったけど昔は楽しかったよと、目を細めながら言っていた。お客さんと飲みに行ったり、吉原に行ったりさぁ。
 オレはもうすぐ90になるんだけどさ、大事なのは希望だと。希望を忘れたらダメだと。オレもこの歳になってもまだ希望を持ってるんだよ。
 途中から気づいたが、どうやら、私の話は聞いてくれないようだ。まぁ、どちらかと言うと聞き上手な方なので、いいのだ。
 あんた、ギンヤンマ知ってるか?知ってますよ、トンボですよね。そう、昔はここにもギンヤンマがたくさんいたんだよ。よくとって遊んだもんだよ。この辺に山もあったんだよ。馬糞を積んだ山がさ。そんなところだったんですか、昔は。そうなんだよ。
 私の話は一切聞いてもらえなかったが、町屋のローカルな大先輩の話が聞けて、私は大満足だった。
 帰り際、女将さんに、話に付き合ってもらってすみませんねぇと言われて、いえいえ、話を聞くの好きですから、楽しかったですよと。でもねぇ、嫌がる人もいるんですよと女将さん。
 そうか。
 ギンヤンマが飛んでいたのどかな町屋を想像しながら帰った。


食べたもの

サッポロ黒ラベル中瓶 570円
きぬかつぎ お通し
ぶり大根 520円
しめ鯖 580円
レモンサワー 410円×3

衆酒場 甲州屋の地図、アクセス

東京都荒川区荒川6-5-3

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