Tokyo Explorer's Map: 高円寺純情商店街｜もう純情でも何でもない高円寺の大きな商店街

　高円寺には、南口にも北口にも複数の商店街があり、都内各所には消滅しそうな商店街が多数ある中で、高円寺の商店街は、それぞれに特色があり、それぞれが活気に満ち溢れています。そして、高円寺の商店街で誰でも脳裏をかすめるのは、ここ高円寺純情商店街でしょう。

　ありきたりな話ですが一応、高円寺純情商店街の本当の名前は、高円寺銀座商店街なのですが、ねじめ正一氏の自伝的小説「高円寺純情商店街」にあやかって商店街の名前を変えたのです。ちなみに、小説内では、純情商店街でも、銀座商店街でもなく、高円寺北口商店街と書かれています。

　小説の「高円寺純情商店街」は、ねじめ正一氏が中学生の頃の昭和３０年代のこの商店街が舞台。当時の商店街は、お店の２階やお店の裏に商店の家族が住んでいるお店が多く、ねじめ正一氏も商店の裏に住んでいたようです。そんな昭和の商店街で起こる、家族やご近所さんたちの昭和な人間模様がユニークに描かれています。

　当時の高円寺純情商店街は、地元密着の地元の人たちの生活のための商店街でしたから、ねじめ正一氏の実家が乾物屋だったように、商店街には、鮮魚屋、惣菜屋、八百屋、金物屋、自転車屋など、生活のためのお店が多くあったことが、小説の冒頭にある地図でわかります。今では、圧倒的に飲食店が多く、都内各所からプチ観光で来るような人が多いのでしょう。

　ただ、駅からすぐのところに、何だか、昭和の商店街というか、マーケットというか、そんな景観を残したような一画があります。鮮魚、肉、青果、惣菜店などがゴチャゴチャとあります。「高円寺純情商店街」の冒頭の地図には、同じような場所に沢崎食料店、大和田果実店と書いてあり、店名こそ今と違うのですが、当時からこの一画はこのような感じだったのかもしれません。

　この路地を進んで行くと、酒場がいくつかある路地になります。

　城西地区に多い酒場、四文屋。高円寺にもたくさんあり、この路地にもあります。

　この路地、昔は、暮らしのための商店が多くあったのでしょうか。この大一市場、かつては乾物屋などのお店が並ぶ市場だったようです。

　この市場内、今では、全て飲食店になっています。

　本筋に戻ります。

　私が初めて訪れた２０数年前から、高円寺純情商店街でしたし、この大きなアーチもありました。その頃感じたのが、何が純情な商店街なんだ？と。無機質なチェーン店や、ビル化された建物も多くあり、人情も純情も感じないなと。

　商店街名の由来を知らなかっただけなのですが。

　高円寺の商店街は、どこも活気にあふれていますが、高円寺純情商店街も、人通りが多く賑やかな商店街です。しかし、この無機質感には、純情も人情も感じないのです。小説が書かれた昭和３０年代は、こんな無機質な景観ではなくて、低層の個人商店が並んでいたのでしょう。そういった意味では、高円寺中通り商店街や、庚申通り商店街、あづま通り商店街などの方が、昭和の商店街の景観を残しているのかもしれません。

　看板建築が並ぶ一画があります。竹下精肉店、看板に大正１３年創業と書いてあります。老舗のようですが、小説「高円寺純情商店街」の地図には、竹下精肉店は載っていません。ねじめ正一氏の記憶忘れの載せ忘れなのか、それか、何処かからか移転してきたのでしょうか。

　文明堂壱番館。おしゃれな外観の看板建築。小説の地図、文明堂壱番館は載っていません。このおしゃれな外観は、今のような洋菓子店か、化粧品店かなと感じますが、小説の地図には、この辺りに新宿中村屋が記載されています。そうだったのかもしれません。

　多分、串かつでんがなの、手前に甲州家という貸ビルがあります。ねじめ正一氏の実家の乾物店はもうないですが、「甲州家乾物店」というお店でしたし、小説の地図にもこの辺りに江州屋乾物店（甲州家乾物店の小説での店名）が記載されていますから、この辺りにあったということでしょう。江州屋乾物店の前にはパチンコ屋が記載されていますが、店名は違えどパチンコ屋もあります。