2023年10月15日日曜日

人形町大門通り沿いの激シブ角打ち”加島酒店”


 人形町大門通り。400年前に、吉原遊郭があったところ。遊郭とは、当時の風俗街。その吉原遊廓は、ここ人形町では数十年あったのだけど、浅草の方に移転になった。これが現在も風俗街として残っている吉原のソープランド街
 400年前に風俗街だった人形町だけど、吉原遊郭移転後は、花街、芸者の街として昭和の中頃までは色街として艶やかな歓楽街だった。夜の遊び方が変わって、長い年月が経ち、人形町は、古い色街としての風情を残しつつも歓楽街の賑わいはない。


 そんな人形町に、古風だけど立派な店構えの酒屋がある。加島酒店だ。この酒屋は、酒が飲める、そう角打ちができるのだ。角打ちというと、下町の労働者の町にある酒屋に多いが、この人形町にも角打ちがあるのだ。
 そして都内の角打ちは、リノベしてネオ角打ちみたいな酒屋も多くなっているが、この加島酒店は、建物すらもそのまま歴史ある建物で、飲めるお酒も別に奇をてらったようなものでなくて、普通の酒が飲めるだけ。そう、ただ酒を飲みたい人が集まる、別に酒のうんちくを語るために集まるのではない、ただの角打ちのままでいるのだ。


 とは言え、初めて入るお店はどうしても緊張するもの。勇気を出して入ってみたが、誰も「いらっしゃい」と言ってくれない。奥に店主のようなご老人がいるが。一見無愛想なのかなと思ってしまうが、そんなことはない。もうお年もお年なので、余計な動きをしないだけ。お店の奥で、ずっとニコニコしてお店を眺めている。
 サッポロ赤星を買って始める。
 お客さん同士、かなり盛り上がっている。それこそ人形町の旦那衆のような人たち、年季の入ったサラリーマンなど、ごちゃごちゃに話している。常連が多いんだな。初めてのわたしは、一人静かに、その様子を眺めながらビールを飲む。わたしが一人で飲みに行くのは、一人で静かに酒で疲れた体を癒したいだけなので、交流はあんまり求めていなんだな。
 そうやって一人で飲んでると、このモノクロな加島酒店に似つかわしくない色が入ってきた。2000年代の裏原、そのまま駆け抜けてきたようなオシャレな中年男性、20代くらいの遊んでそうな白人男性、それと、うーん、お水かなぁ、なんだろうなぁという若い女性。
 この人たちも常連のようで、他のお客さんとワイワイやっている。一人静かに物思いに耽りながら飲むのが好きなわたしであるが、なんだか一人で物思いに耽られる雰囲気ではなくなった。そして、あろうことか、その女性が飲み物の置き場所がないため、わたしの台に来てしまった。


 いや、若い女性と話すのは、全く嫌いではないんですが、わたしは一人で飲みに行くときは、そういう気分ではないのです。でも、そんなことは言ってられない。ここは、酒場、大人の社交場。加島酒店に来るお客さんは、一人で静かに飲むことを求めているのではなく、みんな社交の場を求めてきているのだ。それは、ちょっと居たらわかる。
 「どうぞどうぞ」と言いながら、話をすると、どうやらわたしがよく飲みに行く北区界隈の人らしい。
「東十条とか十条あたりはよく飲みに行くんですよ」
「十条の立ち飲み屋いいですよね」
「あ、勝ですよね」
「そうそう」
「北区でも、赤羽よりも十条の方が落ち着いてて好きなんですよね」
「赤羽は、観光地みたいになってますよね」
 おー、さすが、若いのに、赤羽が居酒屋観光地と化していることを分かっているなんて。
「でも、赤羽の駅前にある居酒屋、なんだっけー、あそこは昔からあるところで、お客さん同士も話したりしてすごくいいお店があるんですよ」
 知らんかった、今度行ってみる!
 そうこうしていると、3人組のその女性だけが帰ることになった。どうやら、誰かと夕飯の約束をしているようだ。そして、周りのお客さんに握手。わたしにも握手。あぁ、若い女性の手のひらの柔らかいことよ。


島酒店の地図、アクセス

東京都中央区日本橋人形町2−7−11

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