新宿歌舞伎町の奥地、戦後昭和のガチャガチャ風情が残る新宿センター街、思い出の抜け道。看板に1951年と書いてあるから、昭和26年からあるのか。
戦後の庶民文化の有形文化財といっても過言でないこのような横丁は、再開発によってどんどん姿を消している。立石の呑んべ横丁が8月で閉鎖になったのも記憶に新しい。思い出の抜け道(新宿センター街)もいつまでもあるか分からない。
そんな戦後昭和情緒を味わえる思い出の抜け道だが、ここは新宿歌舞伎町、そんな情緒と思い出という名前でほのぼのしてしまうが、90年代は中国人マフィアの活動拠点になっていたのだ。そして、挙句には青龍刀事件と呼ばれる殺人事件を起こしている。
新宿らしい危険な思い出も残す思い出の抜け道。おそらく今は、安全で平和なその名から想像する通り、ほのぼのした横丁だ。そして、そんな危険な歴史もこの横丁に趣をそえているのかな。
昭和レトロな思い出の抜け道だが、下町の酒場横丁とは風情が異なる。新宿らしく、何かこう文化的な香りがするというか。ちっちゃいゴールデン街みたいな感じ。
そんな中に、純和風な演歌がよく似合いそうな小料理屋のようなたたずまいの楓がある。音楽はそれこそ、洋邦問わず雑食だけれど、歳なのか、酒を飲む時は昭和の悲哀に満ちた演歌がいい。そんな酒場でゆっくり癒されたい。楓は、きっとそういうお店だろう。
初めてだが、迷わずテクテク歩いて引戸を開けた。
先客お二人。着物に割烹着のママさん、わたしを見て怪訝そうな・・・
着物に割烹着は、わたしのイメージを通り越して、最高なんだが、ママさん冷たそう・・・まぁ、いいいか、一人で静かに飲むんだし。
いつも、わたしは一人でお店に入る時、人差し指を立てて、一人ですがというのをジェスチャーするのだが、ママ、?な感じで何もなさないので、「一人ですが・・」と言うと、「一人ですか、奥だったら空いてます。」
あぁ冷たい。まぁ、その方が飲みすぎなくていいや。話しかけられると、話しを合わせてしまい、いっつも長っ尻になってしまうから・・・
で、気付いたが、あれ?メニューがどこにも無い。居酒屋じゃないのか?スナック?
ビールありますか?とビールを頼んだ。すると、瓶を拭っているではないか!これは、冷蔵庫ではなくて、氷水で冷やしてるんだな!最高!氷水で冷やした瓶ビールは、芯まで冷えている。
冷たいママさんだと思っていたら、お酌してくれて、「この辺は、よく来るんですか?」と会話が始まってしまった。
そこからだ。まー、しゃべるしゃべる!一人静かに飲むはずが、ママさんのペースにまんまとはまり、わたしのお人好しが引き出され、はからずとも話しが盛り上がってしまった。
このお店は、40年やってるそうだ。と最初言っていたが、他のお客さんとは45年やってると、まぁ、長くやっていたら、10年未満は、付いたり消えたりするんだろう。ママさんは、今、確か80歳だか84歳だか。わたしも酔ったら、10年未満は、付いたり消えたりする・・・
70年代後半から80年代前半頃からやっているようだ。ママさんも、今は腰が曲がって8cm縮んじゃったんだそうだが、お店を始めた頃は、30代とか40代というお若い頃からやっているということなんだな。
お店を始めたと思ったらバブル景気が始まって、お店はずいぶん繁盛したそうだ。10人程度のカウンターと4人テーブルの小上がりくらいの小さなお店だが、お客さんで溢れかえったそうだ。「あの頃はねぇ、みんな早くから飲みに来て、そのあとクラブに行くの。クラブに行ったあとは、また、ここに来て飲んで、そして、何か食べに行こうって食べに行くんだから。まぁ、よく飲んでよく食べるの。クラブ行って女でも連れてくればいいのに、いっつも男ばっかり!毎日1時2時までやってたのよ。あの頃は、みんな元気だったね。」
開店してすぐの大盛況で、こんなに儲かっていいのかと思うくらい儲かったんだそうだ。ママさんも海外旅行したり、ずいぶん豪遊したんだとか。
月日は流れて、バブルが弾け、そして新型コロナだ。お店を開けられず苦労したそうで、家で座りっぱなしで腰を悪くしてしまったらしい。お客さんも往時ほどは戻ってこない。
と、もう一人年配のお客さんが入って来て、わたしの隣に。人見知りなわたしは、さっきまでママさんのお相手をしてたお人好しとはうって変わって、物静かな紳士を演じ始める。
そのお客さんから、「よく来られるんですか?」と問われ、「いえ、散策が好きで、前にこのあたりを通った時にいい雰囲気だなと思ってて、初めてきました。」「初めてなんですか?ここ、一見さんお断りなんですよ。」
えっ⁈まじか!だから、入った時、ママさん、怪訝そうだったのか⁈は、恥ずかしい。もう、物静かな紳士でいられない・・・「えー⁈そうなんですか⁈何にも知らずに入っちゃいましたー、、」
そしたら、ママさん、「あまりにもニコニコしてたからさー」ああ、笑顔がいいと若い頃から言われてたが、この年になって笑顔がいいなんて、ある意味恥ずかしい・・・
やはり、居酒屋でなくてスナックなのか。まぁ、酒が飲めればどちらでもいいのだが。そして、いつの間にか名物になったという、おでんをいただいた。
隣のお客さんとママさんとポツポツと話ししていたら、「ママさんは、中国人の事件があった時に青龍刀を見たんですよ。」と、かの青龍刀事件をママさんは目の当たりにしたらしい。新宿の奥深くの横丁で、ママさんは、いろんなことを見てきたんだろうな。
そうしていると、また新たな先輩が。このお方は、60いくつだとかで、新卒の頃から来ているんだとか。その頃は、ここにカラオケもあり、ずっとカラオケを歌ってたんだとか。新卒の頃から飲んでた酒場が残っているなんて、先輩、幸せ者だな。
ローカル酒場で一人静かに飲みたいと彷徨っているのだけれど、今日もなぜか、お人好しの聞き上手を発揮して帰ってしまった。
あぁ、演歌の聞ける居酒屋ってのは、どこにあるんだろう。
食べたもの
枝豆(お通し?)
キリンラガー2本
熱燗
おでん(椎茸、がんも、ウインナー巻き、こんぶ、ごぼう天)
〆て5,000円くらい。おでんは、餃子とか変わり種などいろいろあるらしい。
小料理 楓の地図
東京都新宿区歌舞伎町1−3−11新宿駅周辺の飲み屋街、横丁
歌舞伎町一番街 言わずと知れた新宿一、いや、東京一、いや、日本一の飲み屋街、歓楽街です。ネオンが煌びやかに灯る夜景は素晴らしいです。 |
歌舞伎町さくら通り 狭い路地裏のような通りに、酒場ネオンがぎっしり! |
新宿セントラルロード(ゴジラロード) セントラルロードの奥の東宝シネマズの屋上にゴジラのオブジェがあることからゴジラロードと呼ばれています。通りは飲食街です。 |
思い出横丁(ションベン横丁) 新宿西口に残る戦後、昭和の横丁。新宿駅のすぐ側にこのような横丁が残っているのは奇跡です。最近は、外国人観光客も多いです。 |
小料理 楓 情報交換
小料理 楓について、足りない情報や、新しい情報などありましたら、コメントをお願いします。情報交換の場にしてもらえればと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿
こちらからコメント、情報をお願いします。