東上野コリアンタウン、通称キムチ横丁の散策を終えて、北側に出ると、正面に細い路地があり、その路地には旅館やホテルの看板が連なっています。低層な建物が並んでいますので、大きな旅館、ホテルではないようです。大多数が（とは言っても数軒しかありませんが・・・）、ホテルではなくて旅館で、看板の字体も和風な字体です。
何なのだろう？表通りではなく、こんな路地裏に。なぜ、この一画だけ。日雇い労働者の宿？ドヤ街の山谷からは少し離れているけれども、上野にも存在したのだろうか？それとも連れ込み宿？すぐ近くには、上野のゲイタウンがありますから、そっち系？それとも、本当に旅館？
路地に入り込んでみると、昭和の遺構のような通りには人気も無く、また、旅館たちは、営業してるのか傍目にはよく分かりません。
昭和レトロな建築が残っていますので、レトロ好きには興味の湧く通りだと思われます。
営業してそうな旅館もありますし、カーテンが閉じられ、もう営業していないような旅館もあります。なかなかに風格のある玄関です。
福吉旅館、福沢諭吉を略したようなネーミングですね。
街灯には、「車坂通り」と看板が貼られています。坂？
全くの平地で、坂道ではないのに、なぜ車坂？
昭和レトロな旅館群に、坂でもないのに車坂通り・・・不可思議な通りでございます。
歩きながら、まず、旅館群についてスマホで調べてみました。裏通りにある旅館群ですので、何か、上野の裏びれた歴史と絡んだディープな答えを期待して。
しかしながら、私の期待とは裏腹に、実は、上野の表の歴史から必然的にできた旅館群であることが分かりました。
ご存知の通り、上野は、北関東、東北などの東京の北の玄関口でありました。明治１６年（１８８３）に上野、熊谷間の日本鉄道がスタートしてから、上野駅前には旅館ができ始めたそうです。そして、戦前には、１００数十軒の旅館が、上野駅前にあったそうです。
これらの旅館は、上野駅前旅館街と言われたそうで、１００数十軒ですから、この一画だけでなく、近隣には、旅館がたくさんあったのでしょう。その後の、上野の北の玄関口としての役割が変わってきたことなどの変化によって、旅館は少なくなったのでしょう。その１００数十軒あった上野駅前旅館街の一部が、この一画に遺されているのです。
さて、この路地を抜けると少々大きな路地に出ますが、その通りも車坂通りのままでした。やはり、坂道は無く、平地であります。上野で坂道というのは、上野公園辺りまで行かないとないですし。
ところどころ、レトロな店舗などがありますが、これといって特徴のない通りであります。この通りまで、旅館があったらあ面白かったですが、旅館は全く姿を消しました。旅館が賑やかだった頃は、この辺りにも旅館があったのでしょうか。
お店があるわけではなく、飲食店もポツンとあるのみで。ネットを見てみると、以前は、もっと飲食店もあり、賑やかな通りだったようです。それも、やはり、時代や社会の変化というところでしょう。
車坂通りには、永寿総合病院があり、その正面には、レトロな建築が遺されています。
上野駅方面には、松崎商店というお店があります。諸官省拂下品と書いてありますが、中を覗いてみますと、ミリタリーショップ！米軍の払い下げ品のお店でした。ミリタリーショップと言えば、アメ横の中田商店が有名ですが、こちらの松崎商店も、その筋の方々には有名なお店のようです。
そうこう歩いているうちに、車坂通りの散策は終わりました。結局なぜ、車坂なのかは、またしても、ネットで調べることにします。
で、車坂とは何なのか調べてみますと、上野の山に上り下りする坂のうちの一つでした。今では、ＪＲに分断されていますが、切絵図上で、上野の山の東南側に確かに車坂というさかがあります。そして、その下に車坂門、その延長線上に車坂町があります。
車坂通りは、この切絵図に描かれている車坂町よりもっと南になりますが、この一帯は歴史的に車坂町や、車坂上町、車坂下町などの町名が付けられていたようです。現在、車坂という町名は消滅しています。
このようなことから、車坂という言葉だけ残り、坂も無いのに車坂通りとよばれているのです。ちなみに、役者の渥美清さんは、車坂町のご出身で、一説によると、渥美清さんの演じた「男はつらいよ」の車寅次郎の姓の車は、渥美清さんの出身地の車坂から取られたらしいです。
車坂通りの地図、アクセス
東京都台東区東上野２丁目、３丁目
車坂通り 情報交換
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