2023年5月6日土曜日

見番通り(向島)①|今では都内屈指の花街

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 墨田区向島。平成24年(2012)に押上に東京スカイツリーが開業し、向島というか押上一帯は人の集まる場所になった。それまで押上なんてただの下町で脚光なんて浴びることなく、そして、その押上から少し外れの場所にある向島なんてここ数十年、置き去りにされてきた地域なんじゃないのかな。
 いや、ただ押上に人は集まっているけれど、向島の放置状態は継続中かもしれない。
 ここには、昔、花街があった。最盛期には待合や料亭が100から200軒あり、芸者さんは100名を超えた。東京の花街というと神楽坂が有名だけど、神楽坂にも引けを取らない規模の花街だったようだ。それが今や、東京の花街というとと言って向島の名が出てくる人がどれほどいるんだろうか。


 見番通りには、現代の見番ともいえる向嶋墨堤組合がある。だから、この通りは見番通りと呼ばれているのだろう。
 ただ、この見番通り、花街の色艶なんてものは全く感じられず、このような素っ気なさ。言問橋のたもとからの入り口には2軒の料理屋があるが、そこから先はマンションや住宅街となってしまっている。
 入り口の2軒の料理屋は魚さい上総屋。魚さいは大正3年(1914)、上総屋は昭和9年(1934)の創業と、両店ともこの向島の老舗なのだ。スカイツリーや浅草観光で、人混みを避けるなら、ここまで足を伸ばして食事するのもいいのでは。
 それにしても、こんな不便な地に何で花街が花開いたんだろうか。
 江戸の頃より、向島は、墨堤に植えられた桜の名所として人の集まる場所だった。三囲神社のところでも書きましたが、神社脇に料理家平石なんていう鯉料理の人気店もあったり、また長命寺では、観光に来た人たちに人気の山本やという桜餅の店もあったり、とにかく風光明媚で人が集まるところだった。


  そして明治に入り料理屋が増え、花街を形成していったようだ。当時の繁華街の浅草からも近いし、桜の名所として向島も繁華街になる素養があったということなんだろう。今では全く考えられないのだけれど。


 こんな下町特有の商家か何かの成れの果てのような建物が少し残るレトロな通りという趣はあれど、花街の色艶は全く感じられない。見番通りに料亭はほぼないのだけれど、実は見番通りの路地裏にはまだまだ料亭が残っている。過去に比べれば少ないのだけど、実は向島は今でも都内屈指の料亭街なのだ。
 花街で華やかだった頃の記憶とまだまだ残る料亭を探して散策してみた。


 路地裏には、こんな木造建築も残っている。この辺りの路地裏にはいると結構このような木造建築に出くわす。ザ・下町な情景だ。このような景観がいつまで残されるのだろうか・・・。


 この木造建築の並びの中で、玄関に石垣のようなデザインがなされている家がある。今は民家のようだが、玄関を石垣デザインする?飲食店か何かだったのではないだろうか。


 プロレタリア文学の作家、佐多稲子が家族で長崎から上京後に一時期、向島に住んでいた。その旧居跡には、すみだ郷土文化資料館がある。


 また木造建築。庭木などの趣のある感じから、料亭だったのではと勝手に推察してみる。



 奥のお宅、住居下部の石垣の意匠、さっきの路地裏の木造建築と同じように、もとは住居じゃなかったんじゃないかと思わせる。


 マンションなどが立ち並び、もう繁華街の面影なんかないんだけど、でも、路地裏にポツポツと飲食店があるのは、やはり、過去に繁華街であった土地の目に見えないアイデンティティがそうさせるのか。休みの日だからか、人通りなんてほとんどない。いや、別にオフィス街でもないので、平日も人通りが多いとは思えない。


 向島七福すずめのお宿。もともと料亭か何かなのかなと思わせる趣のある建物。江戸時代のそばを再現したそば屋さん。人通りは少ないのだけど、このお店にはどこからともなく人が入っていく。


 路地裏で発見。料亭跡でしょうね。背後にスカイツリーが見えるのが洒落てる。



 なんの建物だったのかは分からないが、何だか味のある建物がそこかしこにある。やはり駅から遠いと繁華街としての生命力は削がれてしまうんだな。明治の頃は駅なんてどこにでもあるものではないし、やはり浅草に近いという立地が良かったのかな。
 こんな状況だと、古い商家をリノベしても儲からんのだろうな。




 昭和23年創業の和菓子屋、青柳正家。栗羊羹、菊最中で知られる。


 諸国珍味堂の看板。珍味堂とは、神楽坂の名店。一見さんお断り、注文販売のみ、お値段もそれなり。庶民の私には紹介してくれる人も、注文して買うなどの暇もない・・・。
 和菓子屋さんだの、あられ屋さんだの、しかも高級なお店が現れ始めて、何だか花柳会に入ってきているような感じがし始めた。


 そして、路地裏に現役の料亭、すみ多。路地裏にひっそりとある。往時は、こんな路地を芸者さんが歩いてたんだろうな。今でもたまには見れるのだろうけど。


 すみ多の隣の草木で覆われたお店久茂登は、トンカツ屋さん。そういえばさっきもトンカツ屋があったな。花街とトンカツ屋って何か関係があるのかな?


 見番通りに戻ると随分と年季を感じるモルタル商家。手焼きせんべいのいりむらというお店。



 いりむらの裏手には料亭波むら。ここも現役。なかなかの存在感の建物。


 見番通りの向嶋墨堤組合。



 向じま千穂(せんすい)。こちらも現役。



番通り(向島)地図、アクセス

東京都墨田区向島2丁目、5丁目

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