2020年8月30日日曜日

忍小通り|池之端裏通りの寺町

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忍小通りの看板建築

 千代田線根津駅の2番出口側を出て、不忍通りを西の路地に入ると、ちょっと古い街並みが残っている「忍小通り」があります。「忍小通り」という名前の由来は、通りに忍岡小学校があるからです。
 昔は、商店街だったのでしょうか。根津駅側から入ってすぐには、看板建築が並び、床屋さんや畳屋さん、その他、もうお店ではない看板建物がいくつかあります。私の勝手な想像ですが。廃墟の間口も商店のように見えます。

忍小通りの廃墟 忍小通りの昭和レトロ建築

 路地裏に入ると、建物と建物が密着しており、その間を細い路地が這うようにあります。その路地には、狭いにも関わらず植木鉢等が置かれており、下町な光景を存分に楽しめます。

忍小通りの路地裏 忍小通りの路地裏

 ただ、この通りの醍醐味は、この池之端の裏通りに、お寺が点在し、さながら寺町を形成しているところです。江戸時代には、旧水戸藩の中屋敷と加賀藩前田家の上屋敷(現在は東京大学)の大名屋敷の裏手にあるお寺が点在する小径だったようです。江戸切絵図にも載っている、休昌寺、忠綱寺、妙顕寺、大正寺、正慶寺、東淵寺が、場所もそのまま並んでいます。切絵図を片手に歩いてみると面白いかもしれません。また、お寺には、文化人や武士の墓もあったりします。

江戸切り絵図(池之端周辺)

 昔の日本の街には、お寺はつきものでしたし、大都会江戸も例外なく、京都と同じようにお寺がたくさんある街であったはずです。しかしながら、東京は、明治維新の際には上野戦争がありましたし、その後、関東大震災、東京大空襲と、何度もスクラップ・アンド・ビルドを繰り返したため、そのような風景は少なくなってしまいました。そのような災難がなければ、東京も京都のように風情のある景観が保たれていたのかもしれません。

休昌院

 根津駅の2番出口側を出て、忍小通りに入るとまず、休昌院があります。臨済宗のお寺で、明暦元年(1655年)に本郷丸山に創建され、寛文7年(1667年)に、この地に移されたようです。

忠網寺

 その次に、真宗大谷派の忠綱寺があります。寛永元年(1624年)、神田に創建されましたが、寛永8年(1631年)に、この地に移されました。徳川家康に仕え、「槍の半蔵」の異名で知られる渡邉源綱の孫、忠綱の菩提を弔うために忠綱の弟が建立したのが始まりです。

昭和レトロ建築(前面相タイル張り医院) 昭和レトロ建築(表具店) 池之端の鰻屋

 お寺ではありませんが、忍小通りには、味のある昭和レトロな建築もあります。左上は、前面総タイル張りの産婦人科医院。タイル張りというのが、昭和の医院を彷彿とさせます。
 真ん中は、表具店と書いてあります。表具店とは、屏風や襖などを作る職人さんのお店です。江戸の下町の風情を一段と盛り上げてくれます。ただ、廃業しているような感じですので、この建物が取り壊されないことを祈ります。
 右は、建物はそうでもありませんが、老舗の鰻屋の柏家さんです。幕末の慶応元年(1865年)創業ですので、江戸時代から続いている老舗ということになります。昔は、不忍池でも鰻がとれたそうですので池之端界隈は、鰻屋さんが多いですし、こちらのお店も、不忍池の鰻を出していたのでしょうか。
 この柏家さんと、表具店のあたりは、切絵図で見ますと「七軒丁」と書いてあり、町家だったようですので、どちらも古くからあることが裏付けられます。

七倉稲荷神社

 鰻屋さんの前には、七倉稲荷神社があります。この神社は、江戸切り絵図には載っていません。それもそのはず、江戸時代は、浅草蔵前にありました。明治維新後に、こちらに移ってきました。切絵図では、この場所は「川保喜三郎」と書いてあります。武家屋敷だったのでしょうか。


妙顕寺

 次に、正保元年(1644年)創建の、日蓮宗のお寺、妙顕寺があります。浮世絵師・鳥居清信の墓があります。

マンションそばの鳥居 マンションそばの鳥居

 妙見寺と正慶寺の間にアパートがあるのですが、アパートのそばにひっそりとお稲荷さんがあります。何も書いてありませんので、何稲荷かわかりません。こんなところにひょっこりとお稲荷さんを発見するのもこの通りの散策の醍醐味です。

正慶寺

 隣の正慶寺は、寛永7年(1630年)に法林寺として創建され、元禄14年(1701年)に正慶寺に改号した臨済宗のお寺です。江戸時代の俳人、学者の北村季吟の墓があります。

大正寺

 妙見寺の斜め向かいには、日蓮宗の大正寺があります。毎朝、お経が聞こえます。慶長9年(1604年)に草庵として創建され、寛永8年(1631年)に大正寺と号するようになりました。幕末の幕府で要職を歴任し、江戸開城の決定後、割腹の上、ピストルで自害した川路聖謨の墓があります。
 忍小通りは、お寺と低層の住宅がある閑静な通りですが、大正寺の向こうには、池之端の高層マンションがそびえていて、不思議なコントラストです。

忍小のそば屋

 大正寺の向かいには、蕎麦屋さん「うちかた(旧・巴屋)」さんがあります。忍小通り散策の休憩にどうぞ。

東淵寺

 最後に、臨済宗の東淵寺があります。寛永7年(1630年)の創建です。妙顕寺とこの東淵寺は、コンクリート造りです。妙顕寺は、コンクリート造りでも、形はお寺の形ですが、この東淵寺は、全くお寺の形を超越しています。築地本願寺もコンクリート造りですが、インド風な建物でありますが、この東淵寺は、どのようなコンセプトで建てられたのしょうか。

東大裏

 東淵寺を過ぎると、東大の裏手(最先端臨床研究センター)に出て、忍小通りは終わりです。東大はこの突き当たりの絶壁の上、本郷台地にあります。本郷台地が手に取るように見ることができます。ここの突き当たりは、旧・松平出雲守の上屋敷があった場所です。
 右に行くと暗闇坂、竹久夢二記念館、左に行くと、また、お寺や神社等あります。

小通りの地図、アクセス

東京都台東区池之端2丁目

     


小通り 情報交換


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